昨年入手したhp Z600 Workstationは、2009年発売のX58チップセットと同じ世代のWorkstation/サーバー向けチップセットであるIntel 5520を搭載し、更にはUEFIでもないというNVMe SSD起動からは縁が遠すぎるハードウェア構成。が、調べてみると何やらNVMeブートが出来そうな様子。Z600購入後に実機で試してみた所、目的を達する事が出来たので、以下まとめ。
■概要 DUET/REFINDを使用して、BIOSベースのZ600をUEFI化しつつUEFIブートマネージャーを導入し、NVMe SSDから起動を行う。
■流れ 他PCで"Windows Media Creation Tool"を使用し、"WindowsインストールUSBメモリ"(以下ESD-USB)を作成 ↓ NVMe SSDをPC内に設置 ↓ "DUET/REFIND"が書込まれたUSBメモリ(以下起動用USB)を作成 ↓ 起動用USBからブート→DUETでEFIベースPC化 ↓ 起動用USBのREFINDで、ESD-USB上のWindowsインストーラーを起動 ↓ NVMe SSDへWindowsをインストール ↓ 起動用USBからブート→NVMe SSD上のWindowsから起動 ↓ UEFI動作のNVMe SSD上のWindowsが動作となる
■DUET/REFINDとは? 本来は別々のプログラムである。
"DUET"は「Intelの開発者向けUEFIエミュレーターである」「BIOSモードのコンピューターにEFI環境をロードする一種のブートローダーと考えることができます。 DUETを実行すると、基本的にBIOSベースのコンピューターがEFIをサポートするコンピューターに変わります」という記述があるWebサイトがあり、レガシーなBIOS構成 PCには救世主のような存在。
"REFIND"は、本来のスペル表記は"rEFInd"であり、UEFI環境で動作するブートマネージャ。UEFIベースのためmacOS機でも動作し、BootCampを使わずにmacOS機に直接入れたWindowsから起動するといった目的でも使用されている模様。
今回使用する「DUET/REFIND」では、この2つを一つにまとめてGUI上から扱えるように操作メニューを追加して、USBメモリに簡単にインストールできるようにした物、という理解が正解かと思われる。
■用意するもの DUET/REFIND:USBメモリにインストールし、インストールしたUSBメモリから起動する事により、BIOS構成なPCのUEFI化とUEFIブートマネージャーを提供する。UEFI化は行わず(DUETを使用しない)にUEFIブートマネージャーだけを利用することもできる。 USBメモリ:セキュリティ機能がない(※)素の適当な容量のUSBメモリを用意する。なお、インストールとなるファイルはとても小さいため、使い古しの容量の小さいもので可。 ※パスワードツールでUSB内の特定領域を認識させるようなUSBメモリは作成中にエラーが発生してしまう ESD-USB:"Windows Media Creation Tool"で作成したWindowsインストールUSBメモリ
■DUET/REFINDのダウンロード元 下記"参考Webサイト"の2番目のWebページに記載されているGoogleドライブへのリンクからダウンロード(バージョン2015,もしくは2020)、もしくは作者の書込みにあるリンクからバージョン2015もしくは2020をダウンロードする。 ※下記HP Support Communityにあるように、HW構成によってはバージョン2015を使用する場合もある模様
■注意 Windowsをインストールするストレージ以外はS-ATAケーブルの接続を一旦解除しておいたほうが安全。
■起動用USBメモリ作成手順
- 起動用とするUSBメモリを作成作業を行うPCに接続。
- ダウンロードした"DUET_EDK2015_REFIND.zip"もしくは"DUET_EDK2020_REFIND.zip"を解凍し、フォルダ内の"USBSetup.exe"を起動。
- メインウィンドウ右上のドライブ選択で、起動用とするUSBメモリのドライブレターを選ぶ(今回はEドライブ)。
- "CLEAN"ボタンをクリックし、USBメモリ内を消去。
- "FORMAT"ボタンをクリックし、FAT32フォーマットを行う。
- BIOS機の場合は"BOOT"ボタンをクリックし、USBメモリから起動した時にDUETが起動するよう処理を行う。
- "DUET"ボタンをクリックし、DUETをUSBメモリへインストール。
- "REFIND"ボタンをクリックし、REFINDをUSBメモリへインストール。
- "USBSetup"を終了し、作成した起動用USBメモリを対象PCに接続し、起動デバイス順番で起動用USBメモリを最優先に設定。
■Windowsインストール手順
- 起動用USBを接続し、最優先起動デバイスを起動用USBメモリとする
- REFINDの起動メニュー画面が表示となるので、ESD-USBメモリを接続
- ESCキーを押し、デバイスリスト更新ボタン(矢印回転)をクリック
- "Boot Fallback boot loader from ESD-USB"の表示となったら、中央のアイコンをクリック。
- Windowsインストーラーが起動するので、NVMe SSDへWindowsをインストール 水色外装のUSBメモリが起動用USB、その上の黒いのはESD-USB
- インストール終了後の再起動するタイミングで、ESD-USBを取り外す
- "DUET/REFIND"がNVMe SSD上のWindowsを見つけて、5秒のカウントダウン後起動する
- 一般的な起動シーケンスで起動したWindowsと同様にセットアップを行う。
■メモ
- 大型機能アップデート(20H2)を行ったが、Windowsが起動できなくなるといった現象は発生しなかった。
- 起動用USBを通さずにESD-USB単独で起動すると、Windowsインストール先選択でインストール先(NVMe SSD)が選べない。Windowsインストーラーは「このデバイス(NVMe SSD)にインストールしても(BIOSベースの)このPCでは起動できないので、インストール対象としない」と判断していると思われる。
- 起動用USBを通して起動した場合は、インストール先として選ぶ事が可能。
■参考Webサイト Booting to NVMe ON Z820 HP AND Z600 - HP Support Community Z800/600/400はもとより、後継機のZ820/620/420でもNVMe M.2 SSDからは起動できず、起動にはAHCIなM.2 SSD(HP Z Turbo Drive M.2 256GB AHCI (中身はSamsung SM951 AHCI))が必要だった模様。が、1ページ目の後半にUEFI機であるZ820でCloverブートマネージャーを使ってNVMe起動に成功する人が現れる。さらに2ページの最後に"DUET/REFIND"が登場する。
Updated "Add NVME as Boot Drive using DUET/REFIND method" - HP Support Community Z800/600/400とZ820/620/420で、NVMe SSDから起動するための完全なガイド。自分もここに記載された手順で実行しNVMe起動に成功した。
Forum - [Guide] NVMe-boot for systems with legacy BIOS and UEFI board (DUET-REFIND) DUET/REFINDの作者の投稿が掲載されているフォーラムのスレッド。NVMe Support for old Systemsというトピックスの中にある。
■自作市場ではいつ頃からNVMeブートがサポートされていたのか SilverStoneのWebサイトにある記述によると「Intel 9シリーズ(Z97 H97 Z170 X99) / AMD 300 series (A320 B350 X370)またはそれ以降のバージョンのチップセット搭載マザーボード」となっているので、2014年の5月以降の模様。